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「現代の写実―映像を超えて」 Ueno Artist Project: “Contemporary Realism—Transcending the Photograph and Video”



東京都美術館、東京藝術大学などがある「上野」は、多くの芸術家が育ち、輩出してきた長い歴史のある芸術家のメッカです。なかでも「公募展のふるさと」とも言われる東京都美術館は、さまざまな芸術家の発表と成長の場として大きな役割を果してきました。その歴史の継承と未来への発展のために、一定のテーマを決めて、現在公募団体で活躍している現代作家を紹介するシリーズ「上野アーティストプロジェクト」を開催します。第1回のテーマは「現代の写実― 映像を超えて」です。都市の看板や大型スクリーン、そしてテレビやスマホなどを通して写真やビデオの映像情報がめまぐるしく氾濫する現代社会の中で、絵画でしかできない「現代の写実」を真摯に追究する画家たち9人を紹介します。

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出品作家
稲垣考二(国画会)
岩田壮平(日展)
小田野尚之(日本美術院)
小森隼人(白日会)
佐々木里加(女流画家協会)
塩谷 亮(二紀会)
橋本大輔(独立美術協会)
蛭田美保子(新制作協会)
元田久治(日本版画協会)


○みどころ

小森隼人 KOMORI Hayato

小森隼人は、静物画を中心にして一貫して事物の実在感と絵画の完成度を追求してきました。彼は、時間をかけて丁寧に目の前に在る一つ一つの物体の質感と量感(ヴォリューム)が感じられる絵画を制作しています。レモンやブドウの水気のある張りつめた果皮、皿やコップの堅くて冷たい陶器の手触り、光を鈍く反射する冷ややかな銀製や銅製の水差しと容器、そして事物が置かれるテーブルクロスや木製テーブルの平坦な表面と艶やかな肌触りなどは本物そっくりです。


塩谷 亮 SHIOTANI Ryo

塩谷亮の絵画は、現実的で、同時に非現実的です。なおかつ全体の絵画としての統一感も保たれていて、鑑賞者は絵の前である意味呆然としてしまいます。彼の絵画には、機械的に瞬間を捉えた写真の情景とは全く異なる時間が流れているように見えます。いったい、これは現実なのか、白昼夢なのか。その不分明な感覚こそが塩谷亮のリアリティなのかもしれません。


橋本大輔 HASHIMOTO Daisuke

橋本大輔は、施設や工場など建築物の廃墟を劇的に描き出し続けている若手作家です。コンクリートや鉄骨、そして雑草が陽光に照らされた光景は、形容しがたい懐かしさと美しさをたたえています。
彼は、PCを用いてデジタル映像をむしろ積極的に援用しながら、絵画的に凌駕しようとしています。映像にはない奥行きの深さと実在感を出すために、構図や光の当て方などに試行錯誤を繰り返して「循環と更新の運動」の厚みを画面に重ねて加えているのです。


小田野尚之 ODANO Naoyuki

小田野尚之は、風景のなかに記憶、叙情、ノスタルジアを埋め込んだような濃密な絵画を描き続けています。私たちは、彼の絵の中で、幼い頃に遊んだ水辺、蜻蛉を捕ったあぜ道、蛙の鳴く田んぼ、そしてローカル線のある典型的な里山の情景を、岩絵具の質感と共に身体全体で味わうことができます。それは、一昔前の懐かしい湿潤な日本の風景です。


元田久治 MOTODA Hisaharu

元田久治は、都市のランドマーク(目印になる建造物)をモチーフにして、近未来の廃墟を描く版画家です。彼は、2004年ごろから主にリトグラフによって一貫してこのテーマを追求してきました。
リトグラフで精緻に描かれた元田の荒廃した都市風景は、私たちの無意識にある種の警告を与えています。それは、未来の、或いは終末のリアリズムというべきでしょう。


蛭田美保子 HIRUTA Mihoko

蛭田は、数年前から食べ物をモチーフにした絵画を描き続けています。彼女は自分で食材を買い、料理をして、それらを自由に組み合わせてモチーフとして構成し、水彩で写実的に描いてから大きな油彩に仕上げていきます。絵の中で拡大された形象、マチエール、色彩は私たちが普段食べ物に持っているイメージや固定観念を打ち砕いてしまいます。彼女は味覚、触覚、視覚の境界を自由に横断するのです。


佐々木里加 SASAKI Rika

佐々木里加は、脳内の分析、総合の過程に注目して「脳=心」をテーマとして一貫して作品を制作しています。彼女は自分の脳のMRI(磁気共鳴画像)、やCTスキャン(コンピュータ断層撮影)データを元に脳の立体モデルを作り、それを再び画像データに取り込んで、2次元と3次元を往復しながらデータを変換しつつ、脳のリアリズムを追求しています。


岩田壮平 IWATA Sohey

岩田壮平は、琳派の伝統を現代に継承している画家です。ダイナミックな構図とたらし込み技法そして装飾性を取り入れた画面の中に、赤色を基調とした色彩豊かな花々が見事に構成されています。
岩田の絵画は、花の存在感と生命感をリアルに感じさせます。「装飾的リアリズム」とでも呼べばいいでしょうか。彼の絵画は、2次元空間における形と色の喜びを表現するものであると同時に、生きた花々の華やかで溢れるような生命力をストレートに伝えてくれるものでもあります。


稲垣考二 INAGAKI Koji

稲垣考二は、女性の顔、身体、手足などのモチーフを追求し、飽くなき写実描写による強いリアリティを持った巨大な絵画を制作し続けています。とりわけ、皺や繊毛に至るまで克明に写した人間の皮膚、服の布地、木目、割れたガラス、鏡、結露した窓、壁面など、物質の表面に対する脅迫的なまでの描写の連続と持続には驚くべきものがあります。じる

主な作品小森隼人《靑韻》

  • 小森隼人
    《靑韻》
    2015年 個人蔵

  • 塩谷 亮
    《晩春近江》
    2016年 個人蔵

  • 橋本大輔《観測所》

    橋本大輔
    《観測所》
    2016-2017年 東京藝術大学蔵

  • 小田野尚之《発電所跡》

    小田野尚之
    《発電所跡》
    2013年 作家蔵

  • 元田久治《Foresight – Tokyo Skytree》

    元田久治
    《Foresight – Tokyo Skytree》

    2017年 作家蔵

  • 蛭田美保子《光来フラガンシア》

    蛭田美保子
    《光来フラガンシア》
    2016年 作家蔵

  • 佐々木里加《BRAIN MUSEUM》

    佐々木里加
    《BRAIN MUSEUM》
    2017年 作家蔵

  • 岩田壮平《六々魚》(参考画像)


  • 先に観賞したゴッホ展からの流れで、こちらへ。半券で入場無料。どの作品も凄いなぁと思いましたが~一番興味深かったのは、元田久治氏の作品。現実を知っている姿ばかりなので、余計に面白かった。

  • 現代の作家さん、画家の作品を観ていると自分も描きたくなりますね。良い空間でした。



by mizukiroku | 2017-11-24 12:00 | 美:beautiful art | Comments(0)  

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